今月の特集
 
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春闘 -大きく様変わった2004年春闘-
2004.02.23
 
大きく様変わった2004春闘
 
 2月に入り、春闘(春季労働条件闘争)での主要労組の要求も出揃い、いよいよこれからが交渉・協議の本番となる。春闘は1950年代の末から、多くの労組が一斉に会社側に要求書を提出し、賃金を始めとする諸要求の解決を目指す、言わば労使の年間最大のせめぎあいの場としてスタートしてから半世紀以上の歴史を持つ。
 しかし、今年の春闘は明らかに従来とは違う様相を呈している。その要因の第一は経営者団体の強い「ベースアップ廃止」の態度にある。日本経団連の奥田碩会長は「業績がいい会社は一時金で回答すればいい」(2月12日)と述べ、春闘の中心課題であるベースアップそのものを廃止する意向を再三にわたって表明している。
 問題は「ベースアップ」の廃止にとどまらない。日本の賃金制度の基本ともいうべき「定期昇給」そのものの廃止まで踏み込む企業が続出している。例えば日立。日立製作所は定期昇給がこれまで毎年平均ほぼ2%ずつあったが廃止となった。また松下電器産業も年齢給の廃止を打ち出し,ソニーは家族、住宅手当の全廃を決めた。日本経団連の春闘対応方針は常にアドバルーン的なものだったが、近年は企業の実態が先行的に変化し,その対策に労働組合が汲々とする傾向が続いている。
 
成果給・成果主義の波紋
 
 経営側の攻勢の中心をなすものは「成果給・成果主義」賃金の導入にある。個人の業績に応じて配分する成果主義賃金は、当然のこと功罪両面の要素を持つ。もちろん単純に否定すべきものではないが、行きすぎた導入は多くの弊害をもたらす。ひとつは、競争原理に基づき評価するということが労働者間の団結、協力・共同にひびを入れるということはよく指摘されることである。さらに何歳になったら年収がいくらになるという算定が不可能になるため、人生設計が立たないという声もよくきかれる。
 そして一番の問題は、成果給導入が賃金総枠での抑制に、すなわち人件費をトータルで下げる便法として使われることだ。全体として賃金が下がる,ということは可処分所得の減少、つまり使える金額が減るということである。来年の賃金がいくらになるか予想できない人間は金を使わない。したがって消費行動が抑制され、デフレは延々と続き、日本経済の活性化は絵に描いた餅となる。これに社会保険料の負担増が重くのしかかってくる。景気は、最終的に人々が豊かに暮らせて、欲しいものが手に入る条件を獲得しない限り絶対に良くならない。

 
組合はどう対応する
 
 難しいのは、成果給・成果主義の導入が既に一定の流れになっていることだ。こうしたなかで日本の労働組合は春季労働条件闘争をたたかわざるをえない。大きなハンディを背負ったまま3月を迎え,4月を迎えるわけである。
 さて、難しい局面で、労働組合は何をポイントとして対応すべきだろうか。ひとつはPLやBSの分析はもとより、厳密な財務分析を行い、さらに製造・販売・人事・開発も含め企業の現状を厳密に分析把握して、実証的な根拠を持って交渉にあたるべきである。こうした姿勢がなければこれからの労使交渉・協議は乗り切れない。
 電機連合や自動車総連の大手組合がベースアップを断念しているのは、春闘に暗い大きな影を投げかけている。「大手も上げないのにうちは上げるわけにいかない」という中小の経営者が多数出てくるのは必至である。UIゼンセン同盟は連合の方針を受けた形で中小企業の労組向けに定期昇給相当分の5200円の要求水準を設定したが、大手と中小の格差をこれ以上広げない、という姿勢は当然である。
 条件やプロセスは組合によって様々であろうが、とにかく組合員の手取りが減少することは万難を廃して避ける,ということである。また、労働条件とは賃金だけではない。協約・協定の改定にかかわる全ての領域で組合員を守り、改善の方向へ向かう必要がある。


 
正論は労働側に・マスコミも危惧を表明
 
 新聞論調も今回の春季労働条件闘争について、景気回復との関連で経営者団体の考えにいろいろと注文をつけている。
「景気の回復傾向が、交渉の中でどのように反映されるか」(神戸新聞)
「従来、賃金改定は、年功序列的な定期昇給と物価スライド分のベアを基本としてきた。だが、デフレ下にあって、春闘のベア要求は経営側の厚い壁にはばまれてきた。とともに定昇も厳しく賃下げ圧力が増している。『デフレ春闘』は賃金見直しへと向かっている。だが、企業競争力を優先した人件費抑制は、消費を冷やしデフレを加速する恐れがある。雇用確保を含めて大局的な判断が経営側求められている」(沖縄タイムス)
以上はほんの一例だが、おおむねこのような論評である。
 誰が見ても、景気対策にとってカギになるのは相応のベースアップである。労働側は長期にわたって賃金抑制のもとで我慢してきた。一定の業績拡大があるなら今年の春闘こそこれを打ち破り、適正な配分に戻し,併せて大手,中小の格差解消に努力する。これが今年の課題である。



 
【参考資料】
 
2004年度春季労働条件闘争、これまでの経緯

12/14
トヨタ、経験や成果重視年齢給廃止、技能職も対象に
31
日本IBM、年功型手当を全廃
1/6
東海ゴム、管理職の年齢給復活――4月から賃金の2割
8
日産、今春から業績連動型賞与、一部一般社員も
14
富士重も年功賃金廃止(中堅以上の事務・技術系)
15
日産労連、春闘ベースアップ1000円要求の方針
16
自動車総連、各単組判断でベースアップ要求へ
16
三洋電機、新卒から賃金格差(来春にも新賃金制度)
16
全トヨタ労連、ベースアップ統一要求を2年連続見送り
16
連合、「春闘開始宣言」採択
17
NTT労組、ベースアップ要求見送り
17
2006年度から65歳雇用継続義務法施行
19
全本田労連、ベースアップ統一要求を見送り
21
生産性本部会長「60歳での退職とんでもない社会に」
21
鉄鋼連盟会長、65歳雇用延長義務付けに反対
21
金属労協、集中回答日3月17日に設定
26
三菱重労組、一時金要求4万円下げ
27
神鋼が定年退職者を再雇用、60歳対象に
26
奥田経団連会長「65歳雇用継続義務化は不適当」
29
トヨタ労組、ベースアップ要求2年連続断念へ
29
ベースアップ断念決定、子育て支援などを要求の柱に(電機連合中央)
30
自動車労組、トヨタやホンダがベースアップ見送り
2/3
JR連合のベースアップ統一要求1000円
3
住金労組、一時金を年150万円要求(ベースアップは見送り)
3
ホンダ労組、年間一時金6.6カ月を要求(好業績で最高水準)
4
私鉄総連、ベースアップ1300円要求を決定
5
65歳雇用義務化、法案を与党了承
7
JR総連、ベースアップ統一要求1300円に
7
マツダ労組、2年連続ベースアップ見送り
7
日立労組、賃金体系維持と一時金5カ月分を要求
9
NTT労組、ベースアップ要求4年連続見送り
12
2004年春の労使交渉スタート、新日鉄が要求提出
12
日本経団連会長「ベアゼロ、消費に影響ない」
16
トヨタ労組、ベースアップ見送りを承認
17
日産、定昇廃止を正式発表(成果主義型に全面移行)
17
トヨタ、年齢給を3月廃止――退職金は10月からポイント制
19
全トヨタ労連メーカー107組合、6割がベースアップ見送り
   
 
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